■ピアノの試験(大学生編 3 of 5)
♪「ピアノの試験」でバッハを弾く
・「ピアノの試験」で、先生が私の課題としたのは『バッハのフランス組曲第3番』の「メヌエット」でした。この曲は、右手はオクターブで細かく動き、左手はオクターブで大きく動く難曲でした。オクターブとは、例えば低いドと高いドの8音の幅の事で、手をいっぱいに広げて鍵盤を弾く事となります。
・曲は「メヌエット1」と「メヌエット2」で構成されています。「メヌエット1」→「メヌエット2」→「メヌエット1」と演奏します。「メヌエット2」は「メヌエット1」と対照的に、密な三声メロディーです。
・バッハは、聞く分にはとても面白いのですが、演奏となると手をいっぱいに拡げたオクターブの連続や 私のレベルでは常識外れの指使いもあり、難曲そのものでした。そこで、私は毎日「ピアノ室」に通い、猛練習をし、試験本番では、1~2箇所間違えましたが、最後まで弾き通せたので、何とかパスする事ができました。
♪グレン・グールドとの出会い
・教室の隣に「学生の休憩部屋」があり、レコードプレーヤーと数枚のレコードが置いてありました。その中の1枚に私の弾いた『バッハのフランス組曲』がありました。ピアニストは、カナダ出身のグレン・グールドでした。私はその演奏を聞いて「こんなバッハ演奏があったんだ」と、びっくりして、ぶっ飛びました。
・ヨーロッパのレコード屋によっては、グレン・グールドのレコードををクラッシクのコーナーではなく、ジャズのコーナーに置いているそうです。それは、グレン・グールドのバッハ解釈が、従来と桁外れに違い過ぎる為、ヨーロッパのバッハ・ファンがクラッシクと認められないという意思表示かと、思われます。
・しかし、ロックから音楽に入った私には、グレン・グールドのバッハは、とても新鮮に聞こえました。従来バッハの演奏は、極端に言うとテンポは固定で「テンポを揺らして演奏するなどもっての外」でした。しかし、子供の時からバッハを演奏し、たぶんクラッシク以外の音楽も聴いていたグレン・グールドは、自分の音楽魂のおもむくままに演奏した結果、まるで現代音楽のようなバッハが生み出されただけなのかもしれません。
・グレン・グールドのレコードでは、ピアノの音以外に「うなり声」が小さく聞こえます。これはグレン・グールドが、バッハの演奏に陶酔してもらす「うなり声」です。(録音エンジニアは、この声を最小に抑える為に、大変苦労したそうです。)グレン・グールドのバッハ演奏にハマった私は、後に「グレン・グールドのバッハ全集」を購入する程、愛聴する事となるのでした。
・フランス組曲第2番のアルマンド(2分37秒)
・グレン・グールドのバッハ演奏の中で一番好きな曲です。何故か「諦念」という言葉が浮かびます。
・作曲:J.S.バッハ 演奏:グレン・グールド
・フランス組曲第3番のメヌエット(3分31秒)
・右手と左手が独立して動きつつ、協調しながら響き合う、バッハならではの名曲(難曲)です。
・作曲:J.S.バッハ